本プロファイルは患者に投与された注射薬剤の記録をMedicationStatementリソースを使用して表現する。 以下、本プロファイルのMedicationStatementリソースを「JP Core MedicationStatement Injectionリソース」と呼ぶ。

MedicationStatementリソースをプロファイルに組み込んだ先行事例として、以下2つのHL7FHIR記述仕様が存在しており、JP Coreとして利用できる仕様については可能な限り取り入れるようにした。ただし、拡張のURLは新たにJP Coreの命名規則に基づいて命名している。

• 診療情報提供書 HL7FHIR 記述仕様
• 退院時サマリー HL7FHIR 記述仕様

背景および想定シナリオ

本プロファイルは、以下のようなユースケースを想定している。

• 各種医療文書、及び他施設への提供文書に、患者の注射薬剤投与情報を記録する
• 紹介元の医療機関や、患者自身（またはその家族等）から提供された、患者の注射薬剤投与情報を記録する

スコープ

対象

本プロファイルの対象は注射薬剤の投与情報を電子的に連携するためのメッセージを記述することである。

対象としないこと

本プロファイルは注射薬剤に関するものであり、内服・外用薬剤については対象としない。内服・外用薬剤は、指示の仕方や指示する項目が注射とは大きく異なるため、別のプロファイルとして記述することとする。

また、医療従事者によって管理されている投与実施の記録は、MedicationAdministrationが対応リソースとなるため、MedicationStatementは使用しない。

プロファイル定義

必須要素

次のデータ項目は必須（データが存在しなければならない）である。

MedicationStatement リソースは、次の要素を持たなければならない。

• status : ステータスは必須である
• medicationCodeableConcept : 医薬品の識別情報は必須であり、medicationCodeableConcept.coding.system, medicationCodeableConcept.coding.code, medicationCodeableConcept.coding.display が必ず存在しなければならない
• subject : 患者の参照情報は必須であり、subject.referenceないしsubject.identifierが必ず存在しなければならない

Extensions定義

本プロファイルで追加定義された拡張はない。

用語定義

HL7 FHIRの基底規格では、薬剤コードをはじめとして、剤形などでSNOMED CTが使われているが、日本ではライセンスの問題もあり普及していない。代替としてJAHIS処方データ交換規約やSS-MIX2で使われている用語集を採用した。

HL7 V2系では用語集を識別するコーディングシステム名(以下、「CS名」）は文字列であったが、FHIRではURIを指定する必要があるため、それぞれにURIを割り当てた。以下に使用する用語集のCS名とURI表記を列記する。

利用方法

Search Parameter一覧

必須検索パラメータ

次の検索パラメータは必須でサポートされなければならない。

1. identifier 検索パラメータを使用して、オーダIDなどの識別子によるMedicationRequestの検索をサポートしなければならない（SHALL）

   GET [base]/MedicationStatement?identifier={system|}[code]
   

   例：

   GET [base]/MedicationStatement?identifier=http://myhospital.com/fhir/medication|1234567890
   

   指定された識別子に一致するMedicationStatementリソースを含むBundleを検索する。

推奨検索パラメータ

次の検索パラメータをサポートすることが望ましい。

1. patient 検索パラメータを使用して、患者のリファレンス情報によるMedicationStatementの検索をサポートすることが望ましい（SHOULD）

   GET [base]/MedicationStatement?patient=[id]
   GET [base]/MedicationStatement?patient=[url]
   

   例：

   GET [base]/MedicationStatement?patient=123456
   

   リソースIDが123456の患者のMedicationStatementリソースを含むBundleを検索する。

追加検索パラメータ

追加検索パラメータは定義しない。

Operation一覧

本プロファイルに対する操作は定義されていない。

サンプル

下記の内容の処方に従って調剤する例をFHIRで表現する場合のサンプルを示す。

• 服薬情報 注射薬

注意事項

記述の単位について

MedicationStatementは薬剤をCodeableConceptとして1つまでしか持つか、Medication Resourceのreferenceをもつことしかできない。 したがって、複数の薬剤を同一のRp番号で表現する場合にはMedicationStatementを繰り返すか、複数の薬剤をまとめたMedication Resouceのインスタンスを参照することとなる。 ワーキンググループでの検討の結果、冗長とはなるがidentifierにRp番号と薬剤番号を記録することとし、MedicationStatementを繰り返すことで表現する方法を推奨することとした。

投与薬剤、投与量の記述方法

１回の投与薬剤と投与量は、RP内の薬剤が１薬剤の場合も混注などで複数の薬剤を含む場合も、すべての薬剤を記述したMedicationリソースを contained 属性に内包し、それをMedicationRequest.medicationReference属性で参照するようにする。 Medicationリソースのingredient.itemCodeableConcept要素にCodeableConcept型で各薬剤の識別情報を記述し、ingredient.strength.numerator要素に１回あたりの含有量を記述する。薬剤を識別するコードはHOT7、HOT9、YJコード、⼀般処方名マスターを推奨するが、ローカルコードを使用してもよい。含有量の単位コードは MERIT-9を使用する。ingredient.strength.denominatorには固定値「１回」をMERIT-9を使用して指定する。 dosageInstruction.doseAndRate.doseQuantity要素には、情報が得られる場合には全体の容量をUCUM("http://unitsofmeasure.org")を使用してmL単位で指定する。

「ソリタ－Ｔ３号輸液５００ｍＬ １本」と「アドナ注（静脈用）50mg／10mL　１アンプル」計510mLを指示する場合のインスタンス例を示す。

"contained": [
  {
    "resourceType": "Medication",
    "id": "#medication",
    "ingredient": [
      {
        "itemCodeableConcept": {
          "coding": [
            {
              "code": "107750602",
              "display": "ソリタ－Ｔ３号輸液５００ｍＬ",
              "system": "http://medis.or.jp/CodeSystem/master-HOT9"
            }
          ]
        },
        "strength": {
          "numerator": {
            "value": 1,
            "unit": "本",
            "system": "http://jpfhir.jp/fhir/core/mhlw/CodeSystem/MedicationUnitMERIT9Code",
            "code": "HON"
          },
          "denominator": {
            "value": 1,
            "unit": "回",
            "system": "http://jpfhir.jp/fhir/core/mhlw/CodeSystem/MedicationUnitMERIT9Code",
            "code": "TIME"
          }
        }
      }, {
        "itemCodeableConcept": {
          "coding": [
            {
              "code": "108010001",
              "display": "アドナ注（静脈用）50mg／10mL",
              "system": "http://medis.or.jp/CodeSystem/master-HOT9"
            }
          ]
        },
        "strength": {
          "numerator": {
            "value": 1,
            "unit": "アンプル",
            "system": "http://jpfhir.jp/fhir/core/mhlw/CodeSystem/MedicationUnitMERIT9Code",
            "code": "AMP"
          },
          "denominator": {
            "value": 1,
            "unit": "回",
            "system": "http://jpfhir.jp/fhir/core/mhlw/CodeSystem/MedicationUnitMERIT9Code",
            "code": "TIME"
          }
        }
      }
    ]
  },
],
"medicationReference": {
  "reference": "#medication"
},
"dosageInstruction": [
  {
    "doseAndRate": [
      {
        "doseQuantity": {
          "value": 510,
          "unit": "mL",
          "system": "http://unitsofmeasure.org",
          "code": "mL"
        }
      }
    ]
  }
]

投与日時

薬が投与された（または投与される予定の）日時をeffectiveDateTime or effectivePeriod要素にRFC3339形式で記述する。 タイムゾーンはJST(+09:00)を指定する。

開始日時、終了日時が明確である場合はeffectivePeriodに記述する。

"effectivePeriod": {
  "start": "2022-07-01T08:00:00+09:00",
  "end": "2022-07-14T18:00:00+09:00"
}

開始日時しか存在せず終了日時が明確でない場合、effectivePeriodのstartとendに同じ値を記述するか、effectiveDateTime要素に記述する。

"effectiveDateTime": "2022-08-25T08:30:00+09:00"

投与申告日時

情報提供者により投与が申告された日時は、dateAsserted要素にdateTime型で記述する。

"dateAsserted": "2022-08-25T08:35:59+09:00"

情報提供者

投与情報の提供者を、informationSource要素にReference型でリソースの参照情報を記述する。

"informationSource" : {
  "reference": "RelatedPerson/123456",
  "display": "患者 花子（母親）"
}

派生元情報

投与情報の派生元となった処方(MedicationRequest)、調剤情報(MedicationDispense)等が存在する場合、derivedFrom要素にReference型でリソースの参照情報を記述する。

"derivedFrom" : {
  "reference": "MedicationRequest/123456"
}

投与理由（対象疾患等）

この投薬の理由、対象疾患などを、reasonCode要素にCodeableConcept型で記述する。 投与理由で使用するコードは、MEDIS標準病名マスター 病名交換用コード("http://medis.or.jp/CodeSystem/master-disease-exCode")を推奨する。

"reasonCode": {
  "coding": [
    {
      "system": "http://medis.or.jp/CodeSystem/master-disease-exCode",
      "code": "B0EF",
      "display": "持続腹痛"
    }
  ]
}