電子カルテ情報共有サービス2文書5情報+患者サマリー FHIR実装ガイド JP-CLINS(CLinical Information Sharing ImplementationGuide) v1.5.5
1.5.5 - release
Japan
本ページは、国が進めている医療DXのなかでのサービスが検討されている「電子カルテ情報共有サービス」(以下、「CLINS」という。)において扱われる、いわゆる「2文書5情報」のうち、以下の「5情報」を医療機関から送信する際のFHIR仕様に関係する部分を記述したものである。また、送信する各リソースタイプのデータをひとつのFHIR Bundleリソースに格納してまとめて送信するための仕様も記述する。
以下の表に5情報、6情報の記述に使用するFHIRリソースとその仕様の対応を示す。
区分 | 情報種別 | 使用するFHIRリソースと仕様名 | 備考 |
---|---|---|---|
5情報 | 薬剤アレルギー等 | AllergyIntoleranceリソース JP_AllergyIntolerance_eCS |
要素category="medication"、"biologic"(当面使用しない)とする。 |
その他アレルギー等 | 要素categoryを"food","environment"または要素なしとする。 | ||
傷病名 | Conditionリソース JP_Condition_eCS |
||
検査 | Observationリソース JP-Observation-LabResult-eCS |
本仕様では「検査結果情報」という。 検査項目コードで検査と感染症は区別される。 |
|
感染症 | |||
処方 | MedicationRequestリソース JP-MedicationRequest-eCS |
本仕様では「処方依頼情報」という。 |
処方依頼情報には、注射点滴手法によるものは含まれない。ただし、処方箋によって処方されるものは含まれる(自己注射剤など)。
運用上の注意:処方依頼情報は、5情報のひとつとして単独で(2文書に含まれない形で)CLINSに送信されることはない。しかし、診療情報提供書、退院時サマリーの2文書に処方の内容を記述するために使用され、2文書の情報に埋め込まれてCLINSに送信されるため、その場合にはCLINSで取り出されて利用される。従って2文書に含まれる処方依頼情報は、本仕様にもとづいて記述される必要がある。
上記のリソースから参照される関連情報
上記5情報から、その要素情報として参照されるリソースタイプを以下に示す。 ここに記載されないリソースタイプの情報も2文書ではそれぞれの仕様に従い使用可能である。
上記のうち、患者情報以外のリソースは、5情報では、埋め込みリソース(containedリソース)の形で記述される。患者情報のリソースはBundleリソースのひとつのentryとして記述され、5情報からは参照の形をとる。
2文書(診療情報提供書、退院時サマリー)に含まれる5情報に該当する情報の記述方法:
2文書の仕様書に記載されている5情報に該当する情報は、本実装ガイドに従い記述するものとする。
CLINSでは、2文書データは文書として取り扱われるとともに、これらの文書中に記述されている5情報に該当する情報は取り出され管理される。したがって、5情報をCLINSに送信するのと同じ仕様で記述しなければならない。
CLINSに医療機関から送信する場合、1回に送信するリソースデータは、複数のリソースデータから構成されるのが普通である。FHIRではこのような送受信のまとめに、複数リソースデータをひとまりにしたひとつのリソースとしてBundleリソースタイプが用意されている。
Bundleリソース概要図 |
---|
Bundleリソースの記述仕様の詳細については、5情報送信用Bundleリソースを参照すること。
JP_Bundle_CLINS |
CLINS Bundleリソース(CLINS電子カルテ情報共有サービス 5情報送信用Bundleリソース) |
JP_AllergyIntolerance_eCS |
AllergyIntoleranceリソース(アレルギー情報/薬剤アレルギー等) |
JP_Condition_eCS |
Conditionリソース(傷病名情報) |
JP_MedicationRequest_eCS |
診療情報・サマリー汎用 MedicationRequestリソース(処方オーダの1処方薬情報) |
JP_Observation_LabResult_eCS |
診療情報・サマリー汎用 Observationリソース(検体検査結果/感染症検体検査結果) |
JP_Patient_eCS |
Patientリソース(患者情報) |
JP_Encounter_eCS |
Encounterリソース(受診時・入院時等のEncounter情報) |
JP_Practitioner_eCS |
診療情報・サマリー汎用 Practitionerリソース(医療者情報) |
JP_ServiceRequest |
オーダー情報 JP-ServiceRequest |
JP_Specimen |
検査検体情報 JP-Specimen |
FHIRでは、リソースの要素(例えば外来受診・入院歴情報を記述するencounter要素)から参照されるリソースをcontained要素に格納することで、参照される情報を包含する(埋め込む)ことができる。この方法で埋め込み記述されるリソースをcontainedリソース(正確にはContainされたリソース)と呼ぶ。containedリソースは、そのリソースタイプを通常のリソースとして記述する場合に比べて、いくつかの制限があり、例えばcontainedリソースをさらに埋め込むことはできない。 https://hl7.org/fhir/R4/references.html (2.3.0.8 Contained Resources節参照)
リソース要素から、他のリソースを参照する場合、その要素はReferenceデータ型となっている。
Referenceデータ型とは、次のようなFHIR仕様である。
{
reference 0..1 string // リテラル参照(絶対URL、相対URL、内部continedリソースID参照)
type 0..1 uri // 参照するリソースタイプ
identifier 0..1 Identifier // 論理参照(参照先リソースのidenfier要素のひとつを指定する)
display 0..1 string // テキスト代替表現
}
本仕様では、次の3通りのいずれかひとつの方法のいずれかを状況に応じて使い分ける。
(1)containedリソースをインラインリソースIDにより参照する記述方法
CLINSでは、親リソースの要素(例えば外来受診・入院歴情報を参照するencounter要素)が特定のcontainedリソースを参照する場合はこの方法を使用する。
containedリソースへの参照では、このうちreference要素とdisplay要素を使用して、そのリソースが埋め込んでいるcontainedリソースを次の方法で参照するものとする。display要素はこの参照先リソースの主要な情報を簡潔に示す文字列を仕様に従い設定する(省略可能な場合もある)。
参照先であるcontainedリソースのリソースid(id要素)に記述された値の先頭に#をつけたものを(インラインリソースIDという)、reference要素に設定する(例1)。
contained要素のリソースのidは、任意の文字列を設定できるが、contained要素を含む(親の)リソース内で一意(重複がない)となるように作成する必要がある。
例1: Reference型要素の値の例
{
"reference": "#encounter203987"
"display": "入院"
}
例2:Observationリソースの例で、encounter要素、specimen要素がそれぞれcontainedリソースを参照しているケース (関係する要素以外については、記載を省略しているものがある)
{
"resourceType": "Observation",
"contained": [
{
"resourceType":"Encounter",
"id": "Encounter20240601001234101",
"status": "finished",
"class": {
"system": $v3-ActCode,
"code": "IMP",
"display": "入院"
}
},
{
"resourceType":"ServiceRequest",
"id": "ServiceRequest20240601001234101",
"identifier": [
{
"value": "202406010239438473635623"
}
],
"status": "completed",
"intent": "order",
"subject": {
"identifier": "urn:uuid:830ec2d1-67a7-427e-b6fe-ad0eb29da7fb"
}
}
],
"status": "final",
"subject": {
"identifier": "urn:uuid:830ec2d1-67a7-427e-b6fe-ad0eb29da7fb"
},
"besedOn": {
"reference": "#ServiceRequest20240601001234101",
"display": "202406010239438473635623"
},
"encounter": {
"reference": "#Encounter20240601001234101",
"display": "入院"
}
}
[説明]Observation.besedOn要素は、reference要素にObservation.contained[1].id (ServiceRequestリソースのリソースID)の値の先頭に#をつけて記述している。同様にObservation.encounter要素にObservation.contained[0].id (EncounterリソースのリソースID)の値の先頭に#をつけて記述している。
(2) Bundleリソースの別のentryのリソースを参照する方法(fullUrlを用いるリテラル参照)
CLINSでpatientリソースを参照する場合にはこの方法を使用する。
<例:Reference型要素の値の例> (同じBundleリソース内の別のentryに記述されているfullUrlが "urn:uuid:0a48a4bf-0d87-4efb-aafd-d45e0842a4dd" であるリソースを参照する例)
{
"reference": "urn:uuid:0a48a4bf-0d87-4efb-aafd-d45e0842a4dd"
}
(3)Reference.identifier要素を用いる論理参照(logical reference)
CLINSへの送信ではこの方法は用いない。
(4)display要素だけを用いてインラインで表示情報だけを記述するdisplay参照
CLINSでは、Observationリソースにおける検体情報などの記述で、この参照方式を使用している。
<例:Reference型要素の値の例>
{
"type": "Specimen",
"display": "血清"
}
CLINSに医療機関から送信する場合には、個人識別子として、保険者情報と被保険者情報を、一定のルールで記述したPatientリソースを送信することが必須である。この仕様については、Patientリソースの仕様(患者情報 JP_Patient_eCS)の[セクション6][https://jpfhir.jp/fhir/clins/igv1/StructureDefinition-JP-Patient-eCS.html#%E8%A2%AB%E4%BF%9D%E9%99%BA%E8%80%85%E5%80%8B%E4%BA%BA%E8%AD%98%E5%88%A5%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%A0%BC%E7%B4%8D]を参照すること。
CLINSに医療機関から送信する場合、送信するFHIRリソースが長期保存対象の情報である場合には、そのことを明示的に示すため、>それぞれのリソース識別子情報を設定しなければならない。
以下にその仕様を示す。
リソースのデータを長期保存対象とする場合には、そのリソースのデータにおけるmeta要素のtag要素に以下の形式で記述しなければならない。
meta.tag.system = "http://jpfhir.jp/fhir/clins/CodeSystem/JP_ehrshrs_indication" (この固定値とする)
meta.tag.code = "LTS" (この固定値とする)
{
"resourceType": "AllergyIntolerance",
"id": "Example-allergy",
"meta": {
:
<省略>
:
"tag": {[
{
"system": "http://jpfhir.jp/fhir/clins/CodeSystem/JP_ehrshrs_indication",
"code": "LTS"
}
]
}
},
【未告知病名】とは、電子カルテ病名の登録済みの病名であるが、医療者がその病気の説明をまだ患者本人に対して病名やその病状を十分に説明していない段階であり、この病名情報を患者に提供する際には特別の配慮を必要とするものとして、電子カルテの病名登録画面上で、「未告知病名」として登録してある(または同様の意味あいのフラグを付与してある)病名情報のことである。
CLINSに医療機関からこの病名情報を送信する場合、送信する病名FHIRリソースにそのことを明示的に示すため、特別なリソース識別子情報を設定しなければならない。
以下にその仕様を示す。
病名リソース(Conditionリソース)におけるmeta要素のtag要素に以下の形式で記述しなければならない。
meta.tag.system = "http://jpfhir.jp/fhir/clins/CodeSystem/JP_ehrshrs_indication" (この固定値とする)
meta.tag.code = "UNINFORMED" (この固定値とする)
{
"resourceType": "Condition",
"id": "Example-condition",
"meta": {
:
<省略>
:
"tag": {[
{
"system": "http://jpfhir.jp/fhir/clins/CodeSystem/JP_ehrshrs_indication",
"code": "UNINFORMED"
}
]
}
},
病名を未提供(他の医療機関にも患者さんにも提供しない病名)とする場合には、病名リソース(Conditionリソース)におけるmeta要素のtag要素に以下の形式で未提供フラグを記述しなければならない。
meta.tag.system = "http://jpfhir.jp/fhir/clins/CodeSystem/JP_ehrshrs_indication" (この固定値とする)
meta.tag.code = "UNDELIVERED" (この固定値とする)
以下の例のように他のフラグと併用できる。
{
"resourceType": "Condition",
"id": "Example-condition",
"meta": {
:
<省略>
:
"tag": {[
{
"system": "http://jpfhir.jp/fhir/clins/CodeSystem/JP_ehrshrs_indication",
"code": "UNINFORMED"
},
{
"system": "http://jpfhir.jp/fhir/clins/CodeSystem/JP_ehrshrs_indication",
"code": "UNDELIVERED"
}
]
}
},